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「お疲れ様でした、また明日!」
商会での仕事を終えて、同僚たちと別れを告げ。
世話になっている宿へと帰る、夕暮れ時。
「あ、また売ってますね…。」
道端で最近話題の「ディア」という果物が売っていた。
なんでも大変に美味で、やみつきになる、らしい。
「どうにも、こう、怪しいですよねぇ。」
足を止めて、その果物を買いに来た人々を眺める。
噂を聞きつけてきたミーハーっぽい女子、
なにやらブツブツと呟きながら列に並ぶ痩せこけた男、
家族連れの姿も見えるが、子どもはともかく両親はどこか視線が定まっていない。
──こんな噂がある。
曰く、「あの実を食べればもう会えなくなった人に会える」。
曰く、「あの世とこの世を繋ぐ実だ」。
噂は噂でしかない。
しかし、実際にこうして目の当たりにすると。
「……手は、伸びませんよねぇ。」
止めていた足を宿へと向けて。
再び歩き出しながら考える。
現世と幽世とを繋ぐ木の実。
はたしてそんなものがあるのだとすれば一体何にために。
そして。
自身の身近でその実に"魅入られてしまう"可能性があるとすれば、
それは一人だけだ。
「おじい様、大丈夫でしょうか……?」
少しだけ不安になる。
一緒に旅をしていた祖父は、
友人たちに話していた通りの破天荒を絵に描いたような
自由奔放な老人であったが、
時折、本当に時折、とても寂しそうな顔をしてリイネを見ている
そんな一瞬がいくつかあった。
「……心配しても仕方ありませんね。」
どこにいるかも分からない祖父の、
無事を祈るくらいしか娘にやれることはない。
彼が自身と同じ街に来ていたことは、まだ、知らない。
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「うーん、困ったのぉ。」
同じ街に来たと言ったな、あれは(一時的に)嘘だ。
2mを超す長身の体躯は、今、狭苦しそうにPetit近郊の山中、
洞窟の中にいた。
街で耳にした噂は、確かに魅力的な実ではあった。
喪った妻ともう一度会えるなら。
しかし。
「リイネちゃんがおるしのぅ、まだ死んではやれんわ。」
脳内で一度だけ、妻に謝っておく。
そも妻の"一部"はまだ死んでおらず、孫娘が"持って"いるのだ。
「ちゅーかリイネちゃん見つからんし。おっかしーのぅ……。」
冬眠中の熊が邪魔臭そうにじじいを一瞥したが、
特に敵対する様子を見せない竜人に、諦めたように寝直した。
「ま、街で調べた限り普通に働いとるようじゃしの。心配もいらんか。」
街でも有数の貿易商で世話になってるとか、西世界の復興事業に参加してただとか。
風のうわさでそんな話を聞けば、頬を緩ませて。
迷子のじじいはまた、秋空をどこかへ飛んでいく。
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